DHCとオルビスどちらのコンバージョン率が高い? SimilarWebで『CVファネル分析』

Webサイトの接客力を示す指標が「CVR」

Webサイトのパフォーマンスを測る最も重要な指標のひとつがコンバージョン(CV)数であり、そのプロセスKPIで注目すべきなのが、コンバージョン率(CVR)です。

CVロジックツリー

上図は、CVのプロセスKPIを整理したもので、CVは大きく分けると以下のような計算式となります。

来訪数×CVR=CV

これを施策に置き換えると以下の式のように考えられるでしょう。

集客×サイトでの接客=購入数

CVR分析の王道「CVファネル分析」

この、CVRを向上させることを目的とした分析手法に『CVファネル分析』があります。

CVを目的としたWebサイトの場合、ユーザーのサイト内遷移行動の王道はおおむね下記のステップとなります。

CVファネル

CVファネル分析とは、このステップの中で「どのステップでの離脱が多いか」を特定し、その離脱原因を探っていくという分析手法です。

そもそも、Webサイトに来訪したユーザーの99%はCV、つまり買い物をしないでWebサイトから離脱していきます。とはいえ、そもそもショッピングサイトに訪問していいるユーザーである以上、何らかの購入意欲は持っているはずです。しかし、結果的には99%の人が何も買わずに帰ってしまいます。

この時のユーザーの感情として、

  • 「他も見てみよう」
  • 「いま一つ希望に合った商品がない」
  • 「希望の商品はあったが、後日また買いに来よう」
  • 「他社の方が同じ商品なのに安かった」
  • 「Webサイトの使い方が複雑で買い物がしにくい」

など、離脱の理由はいろいろ考えられます。

この「離脱を防ぐ」ための分析がCVファネル分析の一番の目的となります。

ではなぜ「増やす」よりも「防ぐ」なのでしょうか

下図をご覧ください。

CVファネル改善例

左のファネルはCVRが1%の一般的なWebサイトの遷移例になります。この、各ステップの離脱率を5%ずつ改善する(右のファネル)と、CV数は2倍を上回る結果となります

たとえば、購入者数を倍にするために、サイトへの来訪者を倍にすることは施策として現実的でしょうか。担当されている方ならわかると思いますが、お金があったとしても来訪数を急に、それも計画的に倍にすることはとても困難な事です

他方、サイト内を改修して5%改善を3つするという施策計画はどうでしょう。これは工夫と探究によっては実現可能だと考えます。そして、倍の集客を考えるよりも圧倒的に計画予算は少なるのです

単なる掛け算の妙ですが、マーケティングを広告主体で考える傾向のある組織の場合は、対策の選択肢に加えて頂くことをお勧めします。

「もっと良くする」という前に「ロスト(=機会損失)をまず防ごう」という考え方で、冒頭のCVプロセスKPIの「来訪数×CVR」の両輪が重要なのです。

ネットマーケ激戦業界の通販コスメをCVファネル分析

それでは実際に「CVファネル分析」を一緒に見ていきましょう。

今回は分析の対象を通販コスメの大手2社、DHCとオルビスにしました。

以下のステップに沿い、SimilarWebPROでデータを拾っていきます。

  1. サイト内主要ステップのURLのルールを探す
  2. 各ステップURLのページ、もしくはディレクトリのアクセスシェア率を調べる。
  3. シェア率を元に、各ステップのアクセス数を割り出す。
  4. ステップごとにアクセス数を並べ、遷移率とロスト率を算出する。
  5. 競合と比較して、ステップごとにパフォーマンスを比較し、機会損失箇所の仮説を立てる。

①サイト内主要ステップのURLのルールを探す

両社のWebサイトで筆者が買い物をし、その際にURLを拾いました。URLを調査する場合の注意点として以下をご紹介します。

  • カテゴリーによってルールが違う場合がある。
  • 詳細ページは商品特性によってルールが異なる場合がある。
  • カート以降は動的URLの場合が多く、文字数が多くなるので注意して分類する必要がある。

今回の調査結果は以下になります。

URL

また、一番最後の購入完了を指す「CVページ」のURLは、実際に購入したユーザーしか出会うことのないページです。このページのURLとしては、今回のような、thanks、finish、の他に、thankyou、completeなど、「ありがとうございます」「完了」的な意味の文字列が設定されることが多くあります。SimilarWebPROの「人気ページ」リストの中から、このような文字列のページを探すことで発見できるかもしれません。

②各ステップURLのページ、もしくはディレクトリのアクセスシェア率を調べる。

ウェブサイトのコンテンツ>人気ページで、調査したURLごとのアクセスシェアを調べます。このダッシュボードでは、2つの方法でURLごとのアクセスシェアを調べることができます。

▼人気のページ

人気ページ

▼主なフォルダ

主なフォルダ

詳細ページやカート等は、この階層に複数のページが存在する場合が多いために、まずはフォルダ単位で調べた方が早く数字をつかむ事ができます。フォーム遷移以降のページはその階層には複数のページが設定されていない場合が多く、フォルダ自体がこのURLで存在しないケースが多くあります。この場合はページ単位で調べると該当ページが早く見つかります。

各々、見つからなかった場合は両方で探してみてください。あとは、スラッシュや、前のディレクトリの文字列を削除すると検査にヒットしたりする場合がありますので、見つからなくても諦めずに色々トライしてみてください。

また、モバイルとデスクトップごとに集計されるため、各々個別に調査しましょう。スマホ最適化の度合いによりパフォーマンスに大きく差異が出る場合があるほか、問題個所の特定がより正確に行えます。

③~⑤各ステップのアクセス数を算出➜遷移率とロスト率の算出➜機械損失箇所の仮説を立てる

最後に、以下の3つのステップを行いましょう。

  • シェア率を元に、各ステップのアクセス数を割り出す。
  • ステップごとにアクセス数を並べ、遷移率とロスト率を算出する。
  • 競合と比較して、ステップごとにパフォーマンスを比較し、機会損失箇所の仮説を立てる。

エクセルにフォ―マットを用意しておきます。

アクセス数全体は「ウェブサイト利用者」のダッシュボードで調べて入力します。

上記で調査したステップごとのアクセスシェアの値を入力してアクセス数を割り出します。

DHCvsORBIS調査結果

参考までに、上記エクセルフォーマットの計算式をご紹介します。ご自分の使いやすいフォーマットをご用意頂くことをお勧めします。

フォーマットエクセル

両社を比較して、ロスト率の良いものを水色でマーキング、悪いものをピンクでマーキングしました。

また、ステップごとのアクセス数のマクロ比較ポイントを「全体」「商品詳細」「完了」の3点とし、黄緑でマーキングしました。

来訪数はDHCが抜きん出るが、サイト内のパフォーマンスはオルビスが高く、CV数はDHCを大きく上回る。

上記の表を、CVファネルの図に落としました。

DHCvsORBIS調査結果CVファネル

CVRは、DHCが0.4%、オルビスは1.7%と大きく差が出ています。

両社の違いを遷移ステップ順に見てみましょう。

流入

まず、オルビスはモバイル比率が91%と高く、DHCは69%。来訪数はDHCが4,750,000セッション、オルビスが2,760,000セッションと、DHCが大きく差を開けています。

直帰率~商品詳細への遷移

直帰率はDHCのパフォーマンスの高さが目立ちますが、オルビスは商品詳細ページへの直接遷移率が高く、結果的に来訪数で172%を大きくあったアドバンテージは、この時点で117%まで詰まってきています。

カートイン~確認への遷移

カートインまでの遷移はまたDHCのパフォーマンスが上がりますが、その後のフォーム遷移途中での離脱が多く、結果的に確認ページのアクセス数は、DHCが56,173、オルビスが59,130と、オルビスが逆転します。

完了

最後の完了ページへの遷移率はオルビスが77%と圧倒的にパフォーマンスが高く、DHCの遷移率は35%に止まりました。

経験上、決して35%は低い数字ではないのですが、オルビスの77%が抜きんでて高い数値なため大きく差が開き、完了数はDHCが20,065、オルビスが45,876と、オルビスが228%と大きく上回る結果となりました。

今回の分析結果では、流入数では大きく上回っていたDHCでしたが、サイト内のパフォーマンスの差により、購入完了数で大きくオルビスを下回る結果となりました。冒頭でもお話しましたが、このように、いくら集客に注力しても、サイト遷移後のパフォーマンスによって、せっかくの来訪者という資産を多く損失してしまうこともあります

オルビスのWebサイトで感じた点を以下に述べます。

  • モバイル比率が高い。
  • 全体におけるリファラーからのアクセス比率はオルビスが31%なのに対して、DHCは55%と抜きんでて高い。両社ともこの内訳の多くはポイント系サイトからのアフィリエイト。このことからDHCは来訪者の質にビハインドがあったと仮説できる。
  • フォームの作りにおいて、DHCは初期段階で個人情報や送付先の確認をしているが、オルビスは最後の確認ページでようやく出てくる。

もちろん、両社のこの結果は戦略的な違いによる可能性もあります点に触れておきます。

  • そもそも購入単価が違う可能性
  • DHCがこのシーズンに大きく新規顧客の獲得に力を入れていた可能性(購入率が下がる)
  • DHCとしてはWebサイトは顧客接点の入り口であり、他のチャネルで収益を得ている可能性

など。

分析後の改善方法

CVファネル分析によって問題個所の仮説が立った後の改善策として、

合理的な手法をご紹介します。

改善方法

  1. CVファネル分析で、機会損失の多い箇所を洗い出す。
  2. その箇所のパフォーマンスが高い競合他社のWebサイトの同一ステップを調査する。場合によっては、他業界のWebサイトを参考にしても良い。
  3. 複数サイトの「良さそうな」ページや工夫箇所をラインナップし、比較テストをする。
  4. 比較テストの結果、最もパフォーマンスの高いものを本採用する。

比較テストの方法はいくつかあります。

実際のページを複数パターン作り、A/Bテストする。結果はアクセス解析で明確に出る。

プロトタイプ(ラフ描き)を作成し、それを元にアンケートを取る。

クリエイティブ専用のアンケートパネルを活用して低価格/短納期でリサーチ

ページ単位ではなく、ページ内の「箇所」まで原因分析することも可能です。

注意点

今回の調査はあくまで参考値調査という位置づけです。

その理由を以下に述べます。

  • まず、Googleアナリティクス等アクセス解析ツールのデータとは異なり、モニター調査による拡大推計値を元にしているため、実査の数値とは誤差がある。
  • 各ステップのURL構造は、外部から見ての仮説の域を出ません。全ページのURLを隈なく見て調査すれば別ですが、それは非現実的な行為です。従いまして、概ねは間違っていないとは思いますが、厳密に正しいとは限りません。
  • このように、誤差のある数値を元に、正しくない可能性のある構造に当てはめて算出した調査となりますので、これを過信すると分析をミスリードすることにつながりかねません。

とはいえ、これに近い水準のファクトを調査する方法も他に選択肢はほぼなく、低コスト・短期間でこのような視点の調査が行える点を賢く活かして頂ければと思います。

SimilarWebはIP除外していないために、内部アクセス数も計測してしまいますので、実際のマーケティングに実数として使うには注意が必要です。しかし、同一条件で比較することを前提として、相対比較ができる点に注目すれば、アクセス解析とは違う視点での分析ができると考えています。

特に、該当業界の方からすると、「こういう視点で見た方が良い」「ミスリードしているのではないか」などのご意見もあるかもしれませんので、その場合はできましたら是非、ご意見お寄せ頂ければ幸いです。

※トップ画像引用元:flickr.com

The following two tabs change content below.
中川 太

中川 太

外部ライター/執行役員株式会社ジェネレイト
ソフトバンクとオプトが共同設立した「ジェネレイト」にて、ICTとアドテクノロジーを融合したマーケティング施策のプロデュースを担当、執行役員。それ以前のオプトではクリエイティブ領域の責任者として、クリエイティブの広告効果最大化を推進。クラウドソーシングやA/Bテスト、LPOツールの活用、ウェブ解析の人材育成などを推進。ウェブ解析士マスター(認定講師)。Googleアナリティクス個人認定資格取得。

▼競合サイトのアクセスや 直帰率、リファラー、広告の出稿状況などあらゆる指標で分析できる!競合サイト分析ツール「SimilarWebPRO」の詳細はここをクリック

競合サイト分析ツール「SimilarWebPRO」Competitve Intelligence Solutions