命がけで欧州を目指す難民の波!サイト解析からわかった一枚の写真の影響力

深刻化する欧州の難民危機。2015年に入り増加した中東・アフリカから欧州に流入する難民の数は、この数週間で急激に増え、数十万と言われる難民の流入に対するEU各国の対応が割れています。危険なゴムボートで渡航を試み数千の難民が命を落とすなど、ショッキングなニュースが絶えません。

自国の紛争を逃れようと、命がけで欧州を目指す多くの難民の姿。その姿に世界はどう反応し、助けの手を差し伸べたのか。

今回は競合分析ツール「SimilarWeb PRO(シミラーウェブプロ)」を使い、難民援助活動を行う国際機関 / 国際協力NGOのオフィシャルサイトを分析しました。

分析対象となる国際機関 / NGO

難民危機に対する援助活動で国際ニュースメディアに多く取り上げられており、また過去1ヶ月のサイトアクセスが地域に偏らず比較的多い国際機関 / NGOを選択しました。

UNHCR:国連難民高等弁務官事務所(unhcr.orgdonate.unhcr.orgjapanforunhcr.org

世界各地にいる難民の保護と支援を行なう国連機関である。国連総会によって創設され、1951年にスイスのジュネーブを拠点に活動を開始した。

引用元:UNHCR Japan

Doctors Without Borders:国境なき医師団(msf.org; msf.or.jp

医療・人道援助を行っている民間の国際NPOです。1999年にノーベル平和賞を受賞しました。寄付、活動地への派遣、証言・広報を中心に活動しています。

引用元:国境なき医師団

Save The Children:セーブ・ザ・チルドレン(savethechildren.orgsavechildren.or.jp

国連に公式に承認された、子どもたちのための民間の国際援助団体(NGO)

引用元:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

MOAS:ミグラント・オフショア・エイド・ステイション(moas.eu

NGO「ミグラント・オフショア・エイド・ステイション」(=MOAS、「漂着難民の救護所」の意味)は、2015年5月から地中海で、アフリカや中東から命がけで地中海をわたってくる人びとの救命・救助を行っている。

引用元:国境なき医師団

難民支援協会(refugee.or.jp

日本に来た難民を支援している認定NPO法人。日本に逃れてきた難民が、自立した生活を安心して送れるよう支援する団体です

引用元:難民支援協会

1.サイトアクセスの増加!その原因は一枚の写真

まずは、過去28日間の各サイトへのアクセス数推移を見てみます。

1-1. サイトアクセス数の推移

英語の対象サイト全て

サイトアクセス

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

複数の対象サイトにおいて9月2日以降の数日間、確実にアクセス数が増加しています。特に、以下のグラフで分かるように、国連の難民支援機関であるUNHCRの寄付サイト(donate.unhcr.org)へのアクセス数は、9月2日以降に急激に増加しています。

UNHCR(donate.unhcr.org

サイトアクセス

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

日本の対象サイト全て – 日本からのアクセスのみ

サイトアクセス

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

次に、日本からのアクセスにフィルターし、分析対象を日本語サイトのドメインに変更しました。こちらも同様に、9月2日以降に一部対象サイトのアクセス数が増加していることが分かります。特に、UNHCRの日本サイトは、9月以前のアクセス数の倍に増えています

1-2. どうして、サイトアクセスが同時期に増加したのか?

それは、ある一枚の写真により、全世界が難民危機の悲惨な現実を目の当たりにしたためではないかでしょうか。

9月2日に、トルコのリゾート地のビーチで発見されたシリア人の3歳の男の子の溺死写真が撮影され、報道メディア・インターネットを通じすぐに世界中に広がりました。

トルコのメディアが、この少年をシリアのアイン・アル=アラブから来たアイラン・クルディ君(3歳)だと確認した、とロイター通信が伝えている。5歳になる彼の兄も、ボートが転覆した時に死亡したと考えられている。生存者によれば、4人の子供と1人の女性を含む少なくとも12人が死亡し、7人が救助された。

海岸に打ち上げられたクルディ君の体を、トルコの警察官が抱える様子も撮影されている。

引用元:Huffington Post

紛争を逃れるため命がけの旅路を選択する難民の過酷な現実を写し出したこの写真が、国際社会に、そして私たち一人ひとりに現実を突きつけ、衝撃を与えたことは間違いないでしょう。

2.情報はどの様に拡散したのか?

ここからは、対象サイトを絞りより詳細に分析します。対象サイトの中でも、以下2サイトを対象にしました。

  1. アクセス数が多く難民支援に特化した国連機関である「UNHCR」の寄付サイト(donate.unhcr.org
  2. 現在の欧州難民危機を受けて発足し、漂流難民の救助活動を行うNGO「MOAS」(moas.eu

2-1. サイト流入経路

UNHCR(donate.unhcr.org

サイト流入経路

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

サイト流入経路

データ計測期間:2015年6月〜8月

直近28日のデータと、5月〜8月の3ヶ月間のデータを比較すると、難民危機がより深刻化した直近28日においては、リファラー・検索からの流入が増えていることが分かります。

主なリファラーであるUNHCRのメインサイト(unchr.org)への流入が増え(SimilarWeb PRO調べ)、寄付サイトへの流入にもつながったのでしょう。また、欧州に押し寄せる難民の状況を見て、自分にも何か出来ることはないかとサイトを検索し到達したユーザも多いと考えられます。

MOAS(moas.eu

サイト流入経路

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

サイト流入経路

データ計測期間:2015年6月〜8月

MOASの場合は、直近28日のデータで一番変化が見られるのはリファラー経由の流入でしょう。主なリファラーがニュース・メディアであることからも(SimilarWeb PRO調べ)、MOASの漂流難民の援助活動が日々ニュースメディアに取り上げられたことにより、メディア記事のリンクから流入するケースが増えたのではないでしょうか。

2-2. 検索キーワード:

UNHCR(donate.unhcr.org

検索キーワード

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

検索キーワードを見ると、様々な言語で書かれた「シリア」「難民」「寄付」というキーワードがほとんどです。今回欧州に流入している難民の多くがシリアからの難民のためでしょう。UNHCRのサイトの訪問ユーザは、「助けになりたい」「寄付をしたい」という明確な想い・目的を持って到達しているようです。

MOAS(moas.eu

サイト流入経路

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

先ほどのUNHCRとは異なり、MOASの検索キーワードは、団体の設立者である「christopher catrambone」や、MOASが行っている「クラウドファンディング」、同様に漂流難民の救助活動を行う「mare nostrum」など、寄付先を探すというよりは、団体の活動に興味を持って到達しているユーザが多いようです。

3. 世界の寄付金のコンバージョン率はどう変わった?

最後に、SimilarWeb PROの「人気ページ」という機能を使い、サイトのどのページに何パーセントのユーザが遷移したかというデータを分析することにより、各サイト内で寄付に至ったユーザの割合(CVR)を調査しました

3-1. ユーザの遷移率が高いページ

まずは、ユーザの遷移率が高い上位ページの結果を、異なるデータ計測期間で比較します。ユーザの興味・サイト訪問の目的が見えてくるのではないでしょうか。

UNHCR(donate.unhcr.org

サイト内人気ページ

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

サイト内人気ページ

データ計測期間:2015年6月〜8月

直近28日では、「シリア」(”syria”)を含むページが明らかに増えています。また、”thanks-complete”を含む寄付完了時に表示されると想定されるページへの遷移率が倍以上に増えています。

MOAS(moas.eu

サイト内人気ページ

データ計測期間:2015年9月8日時点 直近28日

サイト内人気ページ

データ計測期間:2015年6月〜8月

MOASの場合は、6月~8月の結果上位10に寄付完了ページと思われるページは見られません。ところが、直近28日でフィルターすると、寄付完了ページであろう”thank-you-for-donating”というページが、サイト内で5番目に遷移率の高いページでした。

また、6月~8月の期間では、最も遷移率の高いページは難民受入れの姿勢を示すドイツ用のトップページですが、直近28日では、”donate”の含まれる寄付用のページの遷移率が大幅に増加しています。

3-2. 寄付完了ページへの遷移率

次に、SimilarWeb PROから全ページの遷移率を抽出し、具体的に寄付に至ったユーザの割合(CVR)を分析します。

UNHCR(donate.unhcr.org

SimilarWeb PROから抽出した全ページ(各期間425ページ / 333ページ)の中から、”thanks-complete”がドメインに含まれるページを寄付完了ページと仮定し、CVRを算出しました。

  • 2015年9月8日時点 直近28日 – 9.146735617%
  • 2015年6月~8月 – 3.627645158%

以上の2つの期間を比較すると、寄付に至ったユーザの割合(CVR)は約2.5倍に上がっています

MOAS(moas.eu

SimilarWeb PROから抽出した全ページ(各期間117ページ / 88ページ)の中から、”thank-you”がドメインに含まれるページを寄付完了ページと仮定し、CVRを算出しました。

  • 2015年9月8日時点 直近28日 – 3.374233129%
  • 2015年6月~8月 – 0.347222222%

以上の2つの期間を比較すると、寄付に至ったユーザの割合(CVR)は約9.7倍に上がっています

まとめ

欧州の難民危機は、今も解決の道が見えない人道危機です。解決に向けては、欧州各国だけではなく国際社会としての積極姿勢が必要でしょう。

今回は、そんな難民危機の悲惨な現状に対し、世界はどの様に反応し「助け」の手を差し伸べたのか、「SimilarWeb PRO」を使い調査しました。

「Globalization of indifference」(=無関心のグローバル化)とも言われる今日の世界で、一枚の写真が与えた衝撃、心を動かされた私たち一人ひとりの「想い」、それは国際社会を動かし、世界を変える一歩なのではないでしょうか。

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藤井 沙知

CX Consultant株式会社ギャプライズ
外資系コンサルティングファームにて、企業の経営統合(PMI)やERP導入プロジェクトに従事。国際協力NGOでのインターンを経て、2015年5月に株式会社ギャプライズに入社。現在は、マーケティングから分析・コンサルティングまで、幅広い業務に携わる。2011年、ビンガムトン大学政治学部卒。英語・スペイン語・関西弁のトライリンガル

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