アメリカ大統領選候補者のWeb施策を分析!多様な活用実態が判明

2016年11月8日のアメリカ合衆国大統領選挙を控え、候補者指名争いはいよいよ加熱しています。

アメリカの選挙運動といえば、ITの活用が特徴的です。例えば、オバマ大統領陣営は2008年の選挙においてはソーシャルメディアを、2012年の選挙においてはビッグデータ解析を活用して勝利をつかみ取りました。いまやIT活用によってかつては考えられなかった規模で有権者たちとつながりを築くことが可能になっているのです。

一方、日本はネット選挙運動に関して発展途上と言わざるを得ません。2013年にやっとネット選挙運動が解禁されたものの、選挙運動におけるIT活用の知見や事例は少なく、また法的な制限も堅いという状況です。

今回は、2016年米国大統領選挙の候補者たちの中から5人をピックアップし、彼らの公式サイトを中心にネット選挙運動の様相を分析していきます。

分析対象とする5人の候補者たち

今回は次の5人のネット選挙運動を分析していきます。

  • ジョン・ケーシック
  • ドナルド・トランプ
  • マルコ・ルビオ
  • ヒラリー・クリントン
  • バーニー・サンダース

ジョン・ケーシック(共和党)

John Kasich for America

公式サイト:https://www.johnkasich.com/

現役オハイオ州知事。財政面では保守派である一方、福祉や移民政策に関しては穏健派として知られる。同性婚合法化については「連邦最高裁の判断は既に出ている」として一定の理解を示す。

ドナルド・トランプ(共和党)

Make America Great Again Donald J Trump for President

公式サイト:https://www.donaldjtrump.com/

著名な実業家、不動産王として知られており、メディアへの露出も極端に多い。配慮に欠けると言わざるを得ない極端な発言を繰り返し世間の耳目を集めている。2015年6月以来、共和党世論調査では支持率はトップ。スローガンは、”Make America Great Again!”。

マルコ・ルビオ(共和党・撤退)

Marco Rubio – A New American Century

公式サイト:https://marcorubio.com/

“Stop Donald Trump”を表明する共和党の若手ホープ。かなり保守的であるが、移民家族として育った経験から移民政策には穏健である。3月16日の共和党予備選挙でドナルド・トランプに敗北し、選挙戦から撤退。

ヒラリー・クリントン(民主党)

Hillary for America starts right here Hillary for America

公式サイト:https://www.hillaryclinton.com/

キャリア、知名度ともにダントツ。リベラルな立場から、女性層や非白人層から一定の支持を受けていたが、上院議員時代の日和見的態度からかつての支持層を失った経緯がある。クリントン氏が大統領となれば、初の女性大統領誕生となる。

バーニー・サンダース(民主党)

Bernie Sanders

公式サイト:https://berniesanders.com/

“Political Revolution is Coming.”というスローガンからもうかがえるように、上院で最もリベラルな議員。

公式サイト概観:モバイル・SNS対策には寸分の隙なし

レスポンシブなフラットデザインはデファクトスタンダード

どのサイトもクリエイティブの品質は非常に高くフラットデザインを踏襲しています。

また、すべてレスポンシブデザインとなっておりモバイル対策にも抜け目がありません。

米大統領候補者のモバイルサイト比較

SNS対策、アクセス分析も万全

各サイトとも、Twitter, Facebook, Instagramといった主要SNSの共有ボタンやリンクが埋め込まれていました。

また、<head>~</head>タグを覗いてみたところ、Google アナリティクスのコードやOpen Graph Protocolが設定されていました(Open Graph Protocolとは、FacebookやTwitterなどのSNSでシェアされたURLをリッチかつアピーリングに表示させる仕組みです)。

つまり、アクセス解析やSNSで効果的にアピールするための仕掛けもちゃんとなされているのです。

それだけでなく、ジョン・ケーシック氏とマルコ・ルビオ氏のサイトは、ブラウザを介したデスクトップ通知にも対応しています。些細な機能までも貪欲に活用しようとする先進性には、目を見張るものがあります。

まとめると、各候補者の公式サイトの特徴としては

  • モバイルフレンドリー
  • SNSとの統合、連携
  • 分析ツール設定済
  • OGPも設定済
  • 一部のサイトはデスクトップ通知が有効

となります。

これらの項目が網羅されているというのはまさに「プロの犯行」であるといわざるを得ません。

アクセス分析的視点から比較

それでは、SimilarWeb PROを用いて各サイトのアクセス状況を分析していきましょう。

やはりネット選挙運動においてモバイル対応は必須

各候補者とも、3割~4割はモバイルからのアクセスです。すべてのサイトがレスポンシブデザインとなっていたのも納得です。

たしかに、これほどまでにモバイルの割合が高いならばSNSを活用しない手はありません。

アクセスのデスクトップとモバイル比較

候補者ごとのアクセスシェア比較

各候補者のアクセスシェア比較

元来メディア露出頻度の高いドナルド・トランプ氏が3割を超えているのは納得の結果です。が、バーニー・サンダース氏が最多なのは少々意外と言えます。

彼らはどこからアクセスを得ているのか?

流入元の比率を比較したものがこちら。

流入元概観

※このグラフはアクセス数を比較したものではなく、各候補者の流入比率を比較したものであることにご注意ください。

ドナルド・トランプ氏、ヒラリー・クリントン氏、バーニー・サンダース氏は、ダイレクト(ブックマークやURLの直接入力などによるアクセス)の割合が高い傾向にあります。

ジョン・ケーシック氏以外の候補はソーシャル流入においてほとんど同じ割合。

特筆すべき点はジョン・ケーシック氏の検索流入の割合でしょう。頭一つ、二つ分ほど突出しています。

ジョン・ケーシック氏は

といえます。ここから導かれる仮説は次の通り。

  • ケーシック氏はWebにおける選挙活動を重要視していない。
  • 有権者たちはケーシック氏に興味を持っており、情報をWebに求めている(検索して流入している)。
  • Facebook, Instagram, YouTube, Twitter, Snapchatのアカウントを開設しているにも関わらず活用しきれていない。

多様なSNSのアカウントを運用している一方で、サイトへのアクセスは少ないままにしている(Webのおける選挙運動は重視されていない)。また、検索比率に関しては他の候補者よりも高いのにアクセス数は少ない。

有権者たちの「ケーシック氏に関する情報をWeb上に求める」動きに応えきれていないといっても過言ではないでしょう。

オンライン寄付の未来は明るい

Webにおける米の選挙活動最大の特徴は、オンライン寄付ができるという点。

どの候補者のページにも”Donate.(寄付しよう。)”という文言とともにボタンが設置されています。

バーニー・サンダース氏においては、サイトトップにアクセスしようとすると寄付金を要請するページが強制的にさしはさまれるほど!

 Bernie Sanders for President Contribute to Bernie Sanders

このように少額の寄付を多数から集めるマイクロペイメント手法は、オバマ陣営の事例によってその効果の高さを確かめられており、各候補者ともオンライン寄付を全面に押し出しています。

実のところ、オンライン寄付はどれくらい有効なのでしょうか? 寄付完了ページのURLが特定できた候補者について調べてみました。

SimilarWeb PROを用いて算出した寄付金完了割合の推定値は以下の通り。サイトへの総アクセスのうち寄付金完了ページへのアクセス数の占める割合を示しています。

  • ジョン・ケーシック氏:1.15%
  • マルコ・ルビオ氏:0.45%
  • ヒラリー・クリントン氏:0.01%未満
  • バーニー・サンダース氏:0.01%

(乱暴すぎる仮定であるのは重々承知ですが)単純に「寄付完了」をCVポイント、寄付完了ページへのアクセス割合をCVRとしたとき、ケーシック氏のCVRが最も高いという結果になりました。

ケーシック氏のサイトのアクセス総数が小さいというのは理由の一つとしてあげられるでしょう。PVやセッションが大きくなるとCVRは下がるという経験則とも一致しますよね。

さらに、仮定CVR下位2人のサンダース氏とクリントン氏と比較すると、上位2人のケーシック氏とルビオ氏はそれほど強くアピールしていないという点が指摘できます。あくまで仮定のCVRとはいえ、その差はここに由来するのかもしれません。

彼らは「むやみやたらに献金をせがんでいる」のではなく、実際にWebで個人献金をする有権者は一定数いるというのは事実なのです。

サイト訪問者の興味からうかがえる支持層の分布

同一セッションで訪問したサイトから興味を推測

同一セッションの閲覧履歴からサイト訪問者の興味を推測する「Audience Interests」機能を用いて、訪問者の分布を推定してみます。

各候補者のサイトを訪れた人たちの興味の分布はこちら。

ジョン・ケーシック氏

johnkasich_audience_interests.com

ドナルド・トランプ氏

donaldjtrump_audience_interests

マルコ・ルビオ氏

marcorubio_audience_interests.com

ヒラリー・クリントン氏

hillaryclinton_audience_interests

バーニー・サンダース氏

berniesanders_audience_interests

トランプ氏とサンダース氏のサイトはNews and Mediaカテゴリのページと同一セッション内で訪問される傾向が強いといえます。

一方、”the man who never gets called on in the debates(議論において指名されることのない男、目立たない男)”を自称するケーシック氏にNews and Mediaは一度も出現しません。確かに彼は知名度が特別高いわけではありませんが、政治経験が非常に豊富で、そのアイデンティティは、不動産王あがりのトランプ氏と対立するものです。経験豊富な”最後の知事”が必要とされるいまだからこそ、為政者としての実力とPR力の両方が求められます。

ソーシャルメディアにおける議論の実態

近年ソーシャルメディアと政治の関連が取りざたされがちですが、選挙活動ではどのように利用されているのでしょう?

各サイトへのSNS流入比率がこちら。

social_distribution

概してFacebookとTwitterが主として利用されていることが分かります。彼らのFacebookアカウントを確認したところ、熱狂的な支持者からの応援メッセージ(「グッズを買ったよ!頑張って!」というような投稿)などのポジティブな内容が多く見受けられました

加えて、サンダース氏のReddit比率がFacebookよりも高いのが特徴的です。

ちなみにRedditとは、

ウェブサイトへのリンクを収集・公開するソーシャルブックマークサイト。ニュース記事、画像などの紹介や感想募集のトピックを誰でも立てられるソーシャルニュースサイトでもあり、トピックについてのコメントを誰でも書き込める電子掲示板の一種でもある。

引用元:reddit – Wikipedia

というものです。

サンダース氏に関しては、他の候補者よりも活発に議論が交わされている割合が高いのですね。

まとめ

今回はWebを活用した米国の選挙を分析してみました。SNSだけでなく、メーリングリストへの登録を促したりして、有権者とのコネクションを積極的に築こうとしていることがうかがえました。またマイクロペイメントを募るオンライン寄付は有効であるというデータも得られましたね。そして候補者ごとに、話題になりやすいSNSが大きく異なることも判明しました。

日本でも昨今、日本の政治家たちがFacebookやTwitterを通じた情報発信を始めています。「有権者とのなれあい」や「失言拡声器」としてのSNS利用に終わらせずに、より高次のシナジーを構築していくことが求められます。

選挙活動におけるIT活用は候補者を勝利に導くだけでなく、有権者との関係までも大きく変えていくことでしょう。

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橋本 拓実

大学2年次の2015年10月より株式会社ギャプライズに長期インターン生として入社。専攻は心理学。

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