Googleアナリティクスだけで評価して大丈夫? ベンチマーキングをアクセス解析に加えよう。

※2016年3月18日に行われた、SimilarWeb Digital Vision Conference Tokyo 2016での講演内容をともにした記事です。

ベンチマーキング、行っていますか?

アクセス解析をしていて一番頭を使うのが、「何をもってGood/Badと判断するのか」ということ。

Googleアナリティクスなどの一般的なアクセス解析ツールは対象サイトのデータをくまなく調査できるすぐれた点があるものの、対象サイトのデータしかわからないため、相対的な判断が難しいという課題が残ります。

ひとつ、実際に分析をミスリードしそうになる例をご紹介します。

昨対で115%のアクセス増。これって成功してるってこと?

毎年激戦の家電量販店業界。

売上ランキングは下記のような状況となっており、特に2位~5位は売上高が僅差となっています。

ビックカメラ、ヨドバシカメラ、Joshin3社の売上高

この中で2位のビックカメラのアクセス数を見てみました。

ビックカメラのアクセス数去年比

年間で最もアクセス数の多くなる12月を昨対で比較すると、115%の増加が見られ、着実に成長しているように見えます。

では、他社の状況はどうなっているのでしょうか。

同じ家電業界のランキングを、EC売上という視点で見てみると、ビックカメラは3位となり、上位には全体の売上高ではビックカメラよりも下位であったヨドバシカメラと上新電機が入ってきています。この2社のアクセス数を見てみます。

ヨドバシカメラ、Joshinのアクセス数去年比

ヨドバシカメラは154%、上新電機は129%と、ともにビックカメラを大きく上回る成長を遂げていました。そもそもヨドバシカメラのアクセス数は約1200万とビックカメラの4倍ほどという圧倒的なボリュームの差があります。上新電機は200万アクセスなのでビックカメラの7割ほどですが、売上は3割増くらいのパフォーマンスなので、これだけで考えると客単価が高いことになります。

結果、ビックカメラの成長率115%は、実際には、家電EC業界内上位グループの中では、成長率でみるとむしろポジションを落としていたことになります。

このように、成長性の高い業界においては、市場成長率と比較しての目標設定、判断をしないと、せっかくの事業成長機会を逃してしまうことにもつながりかねないと考えます。こんな可能性があるときは、是非、ベンチマーキングに取り組んでみてください。

ベンチマーキングとは

データの深堀りが得意なアクセス解析。

相対評価やデータの取得範囲はシミラーの有用度が高い。

ベンチマーキングをするための調査として、SimilarWeb PROをご紹介します。SimilarWeb PROを参考例に、アクセス解析とベンチマーキング調査の違いをまずは整理しておきます。次の比較表は筆者の主観も入っていますが、両者の特徴の違いを把握するための整理としてご覧ください。

SimilarWeb PROと他のアクセス解析ツールとの機能比較

アクセス解析の大きなメリットは、データとデータを紐づけて線として分析できることです。ブランドワードで検索して来訪された方は、サイト内でどんな行動をたどっているのか。コンバージョンユーザーの獲得にもっとも貢献している広告はどれなのか、など、行動と行動を紐づけての分析はアクセス解析の大きな優位点だと考えます。

他方、SimilarWeb PROの良さは、検索キーワードや、比較されている他社サイト、他社の広告クリエイティブなど、モニター調査だからこそ取得できるデータの幅があることと、同じデータを同条件で他社サイトと比較できることです。アプリの分析までワンツールで行えることも、マーケッターにとっては利便性が高いと思います。

ベンチマーキング調査のメリット整理

これまでの話をもとに、ベンチマーキング調査のメリットを整理すると、下記2点が最も特徴的なところとなると考えます。

  1. 伸びしろはどこにあるのか?がわかるので、攻めの計画を立てやすい
  2. 改善施策を見つけやすい

ベンチマーキングの事例紹介

いくつかの業界の比較調査の事例をご紹介します。

ここでは、以下3つの視点で調査しています。

エコサイクル一連の流れ

「良い流入」「良い導線」「良いコンテンツ」を通じてユーザーとの関係が深まり、広告に頼らないエコサイクル=真の消費者との関係の創出につながると考え、これを分析の大きな目標としています。

トヨタ、日産、ホンダ、Webアクセス数の一位は?(流入調査の例)

Question

トヨタ、日産、ホンダ

売上のランキングはこんな感じ。

では、来訪数の1位はどこ?

図9

Answer

図10

  • トヨタの418万に対して、ホンダは420万と僅差で上回っている。
  • トヨタはホンダと比較して、売上高は倍近く、広告宣伝費は1.5倍ほどもある。

どうしてホンダはアクセス数を集めているのでしょうか。

検索キーワード

図11

  • 社名での検索数は拮抗。スモールワードに大きく差がある。

広告宣伝は、社名や商品名の認知や興味喚起を狙ったものが多くあり、ネットにおいては固有名詞での検索ボリュームに影響します。その点でトヨタが社名、車種名での検索ボリュームが多いことは納得感があります。

他方、ホンダが集めているのはスモールワード。

車名などの数の集まる大きなワードではなく、ニッチなニーズのある小さなワードを数多く集めています。このような状況は広告宣伝などで短期的に作り上げることは難しく、趣味性の高さや、ユーザーとの関係性などに地道に取り組む必要があり、ここにホンダの企業姿勢がうかがえると感じました。

ユーザー重複/利用者の興味

次に、各サイト間のユーザー重複を見てみます。

図12

  • ホンダは一番重複している他社がヤマハ(オートバイ)。次いでスズキ(軽自動車)。ダイハツ(軽自動車)も比較上位に入っている。
  • 日産にもススキは上位に入っている。
  • トヨタにもスズキが入っているが、トヨタ来訪者の多くはホンダ、日産、スバルなど、普通車メーカーとの比較が中心。

ホンダは普通車メーカーとしてだけではなく、オートバイメーカー(世界一位)、そして軽自動車メーカーとしても同一ブランドで展開しており、商品戦略そのものが他2社と異なっていたことになります。趣味性の高さ、商品戦略の違いなどのあたりが、アクセス数の差異に影響しているのではないかと考えます。

DHCとオルビス、CVRはどちらが高い?(導線調査の例)

Question

通販コスメ業界上位のDHCとオルビス。

WebサイトでのCVR=購入率(購入数÷来訪数)が高いのはどちらでしょうか。

図14

2015/07/01 日本流通産業新聞

Answer

図13

オルビスでした。

  • どうしてCVRがよいのか。
  • CVRが良ければ良いのか。

導線調査の例(コンバージョンファネル/人気コンテンツ)

図15

SimilarWeb PROの「人気コンテンツ」のデータをもとに、来訪から購入完了までの主な遷移を階層で追った図です。この図はファネル分析の類のもので、主にステップごとに来訪者が離脱していくポイントに注視して整理しています。ロスト率が高い箇所は離脱が多く、機会損失が高い可能性があることを示します。

  • オルビスはカートイン後の離脱が少ない。
  • 来訪数に比較して、商品詳細ページの閲覧数が多い。

などの傾向が見られ、これがDHCと比較してCVRが高いポイントだと考えます。

しかし、サイトの指標としてはCVRがよければ良いのでしょうか。ECサイトの場合は他に、購入1回あたりの単価や、再購入の頻度なども重要な指標になります。単価が上がるとCVRは下がる傾向が一般的にあるため、CVRだけで良し悪しを判断するのは難しいと思います。

何の指標を重視するのかは、事業戦略によるところが大きく、そこを見ていく視点が重要だと思います。

京王と小田急、イベントの人気があるのはどちら?(コンテンツ調査の例)

Question

京王百貨店と小田急百貨店。

新宿駅西口の立地、自社私鉄路線の始発駅直結など条件は近しく、Webサイトのアクセス数も同水準。では、催事コンテンツの人気があるのはどちらでしょうか?

図16

Answer

京王百貨店は小田急百貨店と比較して、催事≒イベント系コンテンツのPVは3倍以上ありました。逆に、フロアガイドのコンテンツは小田急百貨店が2倍以上のPVを集めています。

図17

コンテンツ調査の例(人気コンテンツ)

筆者は数年間、京王線沿線に住んでいたことがあるのですが、京王百貨店の催事は知る人ぞ知る的な人気がありました。他方、隣の小田急百貨店はルイ・ヴィトン、シャネル、カルティエ、ティファニーなどの世界を代表するブランドショップが入っており、テナントの充実感は西口随一な印象があります。

このように、条件の近しいウェブサイトでもパフォーマンスが大きく異なることがあり、それも事業戦略の影響が大きい可能性があることが見えました。

三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行、ユーザーとのエンゲージメントはどちらが強い?(アプリ調査の例)

Question

三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行。都市銀行上位2行。

Webサイトのアクセス数では1.5倍くらいの開きがあります。

チャネルのATM化が進んだ現在、エンドユーザーとの接点としてWebやアプリは数少ない手段のひとつとなっており、各社は残高照会を基本としたアプリをリリースしています。では、アプリを通じたエンゲージメントはどちらが強いでしょうか?

図20

Answer

ダウンロード数、アクティブ率などは三菱東京UFJが三井住友の約1.5倍。

図18

しかし、ロイヤルユーザーの継続利用期間は三井住友が約2.5倍長い。

図19

参考)アプリ調査の例

アクティブ率と言っても、どのくらいの期間を目指すかで評価が変わってくるという例だと思いました。三菱東京UFJは、Webのアクセス数も、アプリの各指標も三井住友と比較して1.5倍と大きく差をつけており、預金残高と近しいパフォーマンスを見せています。しかし、数は少ないですが、三井住友はロイヤルユーザーとの長い関係性を築いています。これも、戦略と数字の関係を考えさせられる例の一つだと思います。

※SimilarWeb PROのロイヤルユーザーの定義について

SimilarWebのアプリ分析には「Loyal」と「Loyal Median Lifetime」の2つの指標があります。

継続利用数=Loyal

Loyalはインストール後、長期間利用が続いているユーザーの割合を表します。長期間とは通常では3日以上利用が続いていることを指しますが、その期間はアプリケーション毎にSimilarWebが決定するリテンションレートにより異なります。リテンションレートはアプリケーション個別に利用状況に応じて決定されます。

利用日数= Loyal Median Lifetime

Loyalユーザーがインストール後に該当アプリケーションの利用を止めたユーザーが50%に達した時点の日数を表します。例えば、特定アプリケーションのLoyal(%)が42%でLoyal Median Lifetimeが23日のとき、それが意味するのは、Loyalユーザーの21%(半数)がインストール後23日の時点で利用を止めたということです。

より事業成長に直結しやすいPDCAが可能になる。

このように、競合と比較すると良し悪しが見えやすい。

ディテールよりもアウトラインでつかみやすい。

マネジメント層は、市場データを見る事でより早い意思決定ができるようになり、ディレクターも先行している競合他社の施策を参考にできるので、より事業成長に直結しやすいPDCAが可能になる。

何より重要なのは、

市場全体から俯瞰して自社をとらえられるので、顧客=消費者の声、そしてトレンドをとらえやすい、ということです。

SimilarWeb PROはIP除外していないために、内部アクセス数も計測してしまいますので、実際のマーケティングに実数として使うには注意が必要です。しかし、同一条件で比較することを前提として、相対比較ができる点に注目すれば、アクセス解析とは違う視点での分析ができると考えています。

特に、該当業界の方からすると、「こういう視点で見た方が良い」「ミスリードしているのではないか」などのご意見もあるかもしれませんので、その場合はできましたら是非、ご意見お寄せ頂ければ幸いです。

※当記事内で表記される各社ブランドのロゴや商標については、当記事とは一切の関係はなく、各社がその権利等を有しております。

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中川 太

外部ライター/執行役員株式会社ジェネレイト
ソフトバンクとオプトが共同設立した「ジェネレイト」にて、ICTとアドテクノロジーを融合したマーケティング施策のプロデュースを担当、執行役員。それ以前のオプトではクリエイティブ領域の責任者として、クリエイティブの広告効果最大化を推進。クラウドソーシングやA/Bテスト、LPOツールの活用、ウェブ解析の人材育成などを推進。ウェブ解析士マスター(認定講師)。Googleアナリティクス個人認定資格取得。

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