ブルー・オーシャン戦略ツール「戦略キャンバス」と「4つのアクション」を使いこなす

「その市場はレッド・オーシャンだから、新規事業を立ち上げても失敗するよ」

「既存の市場でビジネスをしていても売上が伸びないから、これからはブルー・オーシャンを狙わないと」

2005年に『ブルー・オーシャン戦略』が出版されてから、現代において「ブルー・オーシャン(未開拓な市場)」「レッド・オーシャン(既存の市場空間)」という言葉は、市場を評価する会話で、ビジネスの現場において日常的に使われる言葉となりました。

とは言え、言葉が日常的に使われる一方、ブルー・オーシャン”戦略”をきちんと理解して、その考え方をビジネスに活用できている人は少ないのではないでしょうか?

「ブルー・オーシャンを開拓するといいのはわかるけど、じゃあ実際どう考えたらいいの?」という疑問にきちんと答えることはなかなか難しいはずです。

そこで本記事では、改めてブルー・オーシャン戦略についての概観を解説するとともに、この戦略のキモとなる2つの分析ツール「戦略キャンバス」と「4つのアクション」の考え方も合わせてご紹介します。

改めて「ブルー・オーシャン戦略」を理解する

ブルー・オーシャンとレッド・オーシャン

まずは「ブルー・オーシャン」と「レッド・オーシャン」の言葉の意味をおさらいしてみましょう。この単語の意味に関しては、おそらく一般的なビジネス用語として広く認知はされていると思われます。

ビジネスにおける市場空間を「オーシャン(海)」に例え、すでに境界線が引かれてあるような既存の市場空間を「レッド・オーシャン」、これまでに開拓されていなかった市場空間を「ブルー・オーシャン」と呼びます。

  • ブルー・オーシャン:未開拓な市場空間
  • レッド・オーシャン:既知の市場空間

ブルー・オーシャンを切り開いたシルク・ドゥ・ソレイユ

では、ブルー・オーシャン“戦略”とはどのようなものなのでしょうか?

ひと言で言えば、ブルー・オーシャン戦略とは、さきほど定義したブルー・オーシャンをビジネス領域として切り開き、これまでにない新しい需要を生み出すための戦略です。

『ブルー・オーシャン戦略』では、この象徴的な事例として、斜陽産業のサーカス業界において売上を一気に伸ばしたシルク・ドゥ・ソレイユの例が挙げられています。

具体的には、シルク・ドゥ・ソレイユ以前のサーカス業界は以下の3つの問題が生じていました。

  1. 客を集める花形パフォーマーに人気が集中してコストが高騰
  2. 子ども向けのエンタメが無数に提供されていることで、観客数の減少
  3. 動物愛護団体からのサーカスへの反発

このままではそれぞれのサーカス団が競争していても、あまり旨みには乏しいのが現状です。

しかし、シルク・ドゥ・ソレイユはそんな既存のサーカス業界の枠から外れた戦略(つまりはブルー・オーシャン戦略)を実行します。既存のサーカスでは出し物同士の間に関係性がなかったところに「ストーリー性」の導入をしたり、これまで子ども向けで安かったチケットを演劇と同じ水準、つまりは従来のサーカスの数倍に設定。従来の市場で闘うことを放棄し、今までとは全く異なる価値を提供したことで、高価格・高利益を実現したのです。

▼参考記事

ブルー・オーシャン戦略の土台となる「バリュー・イノベーション」

またブルー・オーシャン戦略を理解する上で大きく影響するのが「バリューイノベーション」という概念です。

バリューイノベーションとは、コストを下げながら、同時に買い手にとっての価値を高めることで、企業と買い手双方にとっての価値が飛躍的に高まった状態のことをいいます。

具体的に、シルク・ドゥ・ソレイユに当てはめてみると、シルクはストーリー性の導入や、テントなどの設備の刷新などで買い手の価値を高めるとともに、費用のかかるサーカス界のスターに頼らないショーを行うことでコストカットを行いました。

この差別化と低コストの両方を追及することで、バリューイノベーションが実現するのです。ブルー・オーシャン戦略の特徴はこの差別化と低コスト化の両方を同時に狙うところにあります。

バリュー・イノベーションは差別化と低コストを同時に実現することである

なぜ?改めてブルー・オーシャン戦略なのか?

ここまでブルー・オーシャン戦略の概観をご説明しましたが、改めてなぜこのタイミングでブルー・オーシャン戦略なのでしょうか?

『新板ブルー・オーシャン戦略』の監訳者序文には次の3つが挙げられています。

  • 理由1:いま日本で注目されている事業・企業は、軒並みブルー・オーシャン型である
  • 理由2:バリュー・イノベーションを起こすための、実践的なアプローチが示されている
  • 理由3:これからの不確実性の時代を切り開くのは、ブルー・オーシャン戦略である

一つ一つの説明をすると長くなってしまうため、ここでは理由1についてのみ考えてみます。

ここ10数年の間で、日本ではたくさんの「既存のビジネスの枠組みを変える」サービスが生まれました。ざっと挙げるだけでも、様々なものが考えられます。

  • 受験サプリ(現:スタディサプリ) ➔ 受験勉強は予備校の教室で行うものという枠から外れ、予備校に通えない受験生を取り込み新市場を創造
  • JINS PC ➔ 高価格が当たり前だったメガネ業界に、低価格かつシンプルな価格設計を導入。かつ、「メガネは視力の悪い人のためのもの」という市場の常識を大胆に引き直した
  • ライフネット生命 ➔ 販売チャネルをネットに絞り込み、ネット生保という新たな市場を切り開いた

これらを改めて眺めてみると、すべてブルー・オーシャン戦略と合致する事業であり、これまでの「市場の境界を引き直して」躍進しているビジネスといえます

▲SimilarWeb PROにて分析した2016年5月〜2017年4月のセッション数の推移:月間の平均セッション数は約200万という数値に成長している

これら躍進ぶりを考えると、ブルー・オーシャン戦略が現代において、いかに必要なのかが理解できるでしょう。

ブルー・オーシャン戦略の分析ツール①:戦略キャンバス

ブルー・オーシャン戦略の概要を理解した後は、いよいよ「ではどのようにして戦略作っていくか?」がカギになります。差別化と低コスト化を実現しようと言っても、じゃあ何を差別化すればいいのだろうか?どこのコストを下げればいいのだろうか?をきちんと考えなければいけません。

そこで、活躍してくるツールの一つが「戦略キャンバス」です。

「戦略キャンバス」の描き方と2つのメリット

「戦略キャンバス」のアウトプットとしては以下のようなチャートになります。

ブルー・オーシャン戦略:シルク・ドゥ・ソレイユの戦略キャンバス

横軸には「業界の競争要因(=顧客から見た価値)」を記し、縦軸には各要因に対して「顧客がどの程度のレベルを享受しているか」を示しており、高スコアであるほど、企業がその要因に力を入れていることを意味します。

この戦略キャンバスを作成することで、2つのメリットを得られます。

  1. 既存の市場空間について現状を把握すること
  2. 競合他社が何に投資しているか、各社が製品、サービス、配送などの何を売りにしているのか、さらには、顧客はどのようなメリットを享受しているのか

さきほどのシルク・ドゥ・ソレイユのチャートを改めて見てみましょう。横軸に「価格」や「花形パフォーマー」「館内販売」などの競争要因を並べ、既存のサーカス団を評価すると、どの点に投資をし、どのような点で顧客メリットを打ち出しているのかが一目瞭然です。

ブルー・オーシャン戦略の分析ツール②:4つのアクション

さて、戦略キャンバスを描くことで、既存の市場空間や競合がどこに投資をしているかがわかります。ただ、キャンバスを描いただけでは、次のアクションをどうすればいいかの答えは導き出せません。

そこでブルー・オーシャン戦略では、戦略キャンバスを描いた後に、「自社事業をこれからどう展開していくか?」という問いに答えるための発想を膨らませるツールとして「4つのアクション」というものを提示してくれます。

「4つのアクション」とは何か?

4つのアクションとは、ブルー・オーシャンを切り開く、つまりは差別化と低コストを同時に追及するために、次に4つの問いを通して、業界のこれまでに戦略ロジックやビジネスモデルを刷新するためのものです。

具体的には次の4つの問いからなります。

  • Q1:業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何 か?
  • Q2:業界標準と比べて思いきり減らすべき要素は何か?
  • Q3:業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か?
  • Q4:業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か?

ブルー・オーシャン戦略ツールの「4つのアクション」

これらのアクションをシルク・ドゥ・ソレイユの例で改めて考えてみましょう。

シルク・ドゥ・ソレイユは、業界で標準的に行われてきた「花形パフォーマー」や「動物ショー」「複数ショーの同時進行」を減らし、「テーマ性」や「快適な鑑賞環境」などを付け加えることで、「価格」を増やすことを実現しています。

このように戦略キャンバスで描いた自社と他社の価値曲線を眺め、4つのアクションをもとに顧客価値を変革することで、ブルー・オーシャンを切り開くことができるのです。

ブルー・オーシャン戦略をより深く理解するために

今回、ブルー・オーシャン戦略の2つのツールをご紹介しましたが、まだまだブルー・オーシャン戦略には様々な分析フレームワークや戦略策定にあたっての注意点などあります。

例えば、4つのアクションで他社とは違う価値を付け加えたり、減らしたりしてみようと思うが、それがほんとに筋の良いものかわからない、などの疑問があると思われます。そこに関しても、示唆に富んだ指針が『ブルー・オーシャン戦略』には書かれています。

もし、あなたが競合との競争に頭打ちを感じていたり、何か新規事業を立ち上げたいと考えているのなら、ぜひ本書にあたってみるのがよいでしょう。

photo by apasciuto – ocean

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大浦 雅俊

デジタルエージェンシーである株式会社インフォバーンにて、Webディレクターとして大手自動車メーカーなどのコンテンツ開発・ディレクション業務を経験。現在は同社でアカウントプランナーとして、大手企業を中心にマーケティング支援を行う。

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