【広告解析手法】競合EC分析手法 | 競合の集客手法 / インサイト / コンテンツ / CV動向を知り、自社のデジタルマーケティング戦略に活かす術 Part 1

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

中国春秋時代の軍事思想家、孫武の有名な一言。

Web領域において、Google Analytics等を導入している企業ならば自社サイトの状況は把握できるため、まず”己を知る”ことはできます。

では、”彼(競合)”のことは把握できていますでしょうか?

今、アメリカでは小売チェーン店の成長鈍化が顕著です。その大きな要因としてオンライン小売業の急速な市場侵食が関与しています。

Nikeが昨年amazonでの直販を始めるなど、小売業界では生き残るため、ECに関する意思決定の一つ一つが、自社のビジネスを大きく揺るがす時代に入っています。

本稿ではマルチデバイスマーケットインテリジェンスを提供するSimilarWebを使い、小売競合EC解析手法をご紹介。

Web上で”彼(競合)”を知る方法を解説します。

まず、相手が誰かを知る

「自社の競合はA社、B社、そしてC社だ。」

本当にそれだけでしょうか。

競合分析を始める前の注意点として、まず「足して100」になるように調査対象を揃えることが重要です。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建させた日本を代表するマーケター森岡毅氏。

彼が使う数学的フレームワークを応用した、競合抽出手法を下記の記事にまとめましたので、実際に競合分析する際はまずこちらをご参考ください。

数学的フレームワークを使った「足して100になる」競合抽出法

『数学的フレームワークを使った「足して100になる」競合抽出法』

競合の集客チャネルを知る

本稿では”Webにおける”広告解析手法をご紹介します。

解析に入る前にひとつ、重要な点があります。

それは本稿で抽出したデータや戦略が結果的に、オフラインにおける小売実店舗の売上増加に寄与できるということです。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事、『小売業界から高利益率を維持する施策を学ぶ「成長」から「成熟」への戦略分岐点』では、既存店売上高を押し上げるには下記のような要因があると説いています。

既存店の売上高を押し上げる方法

引用元:小売業界から高利益率を維持する施策を学ぶ「成長」から「成熟」への戦略分岐点

つまり、時代がECに動いているからそればかりに投資するのではなく、データドリブンマーケティングの発想を元にWeb解析を行う必要があります。

【アデコ:岩嶋 宏幸】データ・ドリブン・マーケティングとSimilarWebで企業の競争/共創力を高める。

集客チャネル分析

ここから実存する国外のスニーカー小売チェーン2社を元に分析していきます。

※本稿で取り上げるA社とB社は実在していますが、解析によるデータは一部編集しており実数値ではありません。またAおよびBのスペルは社名の頭文字ではなく、仮で指し示した名前になります。

まず、2社の集客チャネルを割合で見ていきます。

集客チャネル分析:割合

集客チャネルを見ると、広告による流入がB社の方が多く、A社よりも広告出稿に力を入れていることがわかります。

では、どのような広告手法をとっているのか?こちらは後ほど実際のデータと共に解析していきます。

先ほどの集客チャネル分析を続けます。

集客チャネル分析:時系列

どのチャネルにおいても、10月を境にトラフィックが増加トレンドに変わっています。

それぞれのチャネルにおいて時系列的観点、シーズナリティ、2年前との比較、トレンドの減少要因…などなど、どこに着目するかでいくらでも分析を深堀できます。

本稿ではこのチャネル分析を元に、競合の広告解析を行いました。

続編(7月中旬以降公開予定)では下記を解析していきます。

  • 競合のオーガニック検索キーワードおよびこれに伴うインサイト
  • 競合のコンテンツ分析
  • CV動向分析

本稿ではWeb広告手法である、有料検索広告ディスプレイ広告にフォーカスを当てた分析を行い、広告戦略立案に活かす要素抽出法をご紹介いたします。

競合の広告手法を自社の戦略に活かす:有料検索

この章では、さきほど同様の国外スニーカー小売企業A社とB社における有料検索を解析していきます。

有料検索解析でわかること

SimilarWebを使った有料検索解析により抽出できる、戦略立案を目的とした抽出要素は以下です。

  • 競合とどれくらい差があるのか?
  • 自社および競合のエンゲージメントにおけるSWOTは何か?
  • 自社と競合でどのように有料検索キーワードが異なるのか?
  • 自社と競合のキーワードにおけるSWOTは何か?

これらを明確に抽出することで、どこで勝負するのか?差別化を図るのか?撤退すべきか?といったネクストアクションへつながります。

解析ポイント

まず、先ほどのチャネル分析でみたA社とB社のトラフィック動向を再確認します。

集客チャネル分析_有料検索:時系列

両社でトレンド傾向が近似している期間と、そうでない期間があります。このトレンドから今回は下記3点に着目して解析します。

  • 2017年における年間通した有料検索のエンゲージメント詳細(平均滞在時間 / ページビュー数 / 直帰率)
  • 2017年における年間通した有料検索キーワード解析
  • 共に増加トレンドにある10月~12月にフォーカスしたデータ解析

2017年における年間通した有料検索のエンゲージメント

まず始めに、各社の有料検索から流入したユーザーのエンゲージメントを解析。

集客チャネル分析_有料検索:時系列

全体のトラフィック量で勝っているのはB社。

両社ともにエンゲージに大きな差がつくことはなく、共に高いエンゲージメントを維持しています。

着目ポイントをあげるならば、繁忙期と思われる10月以降のトレンド。ここでA社のエンゲージメントが高まっています。

これを見るに、A社のサイトに有料検索から流入したユーザーは、そのページに好意を示し、且つ他にはどんな商品があるのか?とさらに興味を示している可能性があります。

つまり、繁忙期と思われるこの時期にA社は、有料検索から流入したユーザーのエンゲージを高める戦略を実施していることがわかります。

2017年における年間通した有料検索キーワード解析

有料検索キーワード

では、どのような有料検索キーワードから流入していたのか?

トラフィック数の多いtop20を両社別々に見ていきます。

A社:有料検索キーワード_2017年間

A社ブランド名のキーワード、「Nike」等の靴ブランド名が多く見受けられます。

続けてB社を見ていきます。

B社:有料検索キーワード_2017年間

A社同様、B社ブランド名および「adidas」等の靴ブランド名が入ってきます。

テキストマイニングを使って頻出度の高いキーワードを抽出

これら2社のキーワードをテキストマイニングを使い、さらに有料検索キーワードを解析します。

A社:有料検索キーワード_2017年間_テキストマイニング

調査したところ、両社ともに頻出度の高いキーワード上位5位が全て同じ

また、他のキーワードに関しても似ているキーワードが揃い、有料検索において両社のキーワードは年間通してバッティングしています。

ここまでのデータとさきほどのエンゲージメント結果を照合すると、流入量はややB社が優位でも、ユーザーのエンゲージが高い、つまりは購買行動が起こりやすいのはA社である可能性があります。

共に増加トレンドにある10月~12月にフォーカスしたデータ解析

年間通して行った有料検索キーワードの解析を、両社共に増加トレンドにあった10~12月に限定して調査していきます。

先ほど同様SimilarWebから有料検索キーワードを抽出し、トラフィック数が多い順に2017年間と、10~12月に絞ったキーワードを並べると以下のようになります。

A社:有料検索キーワード_2017年間_10~12月

年間でトラフィックの多かったいくつかの有料検索キーワードが10~12月にも見受けられます。

また、この時期限定で検索数の多い有料検索キーワードもいくつか見受けられます。

続いてB社のデータを見ていきます。

B社:有料検索キーワード_2017年間_10~12月

こちらでも10~12月の特定の期間で上位に入るキーワードが見受けられます。

A社とB社、共にこの繁忙期でトラフィックの多かった有料検索キーワードは「特定の靴名」と「Black friday」。

ここで両社の有料検索における、戦略の違いが見受けられます。

A社は年間通してトラフィックの多いキーワード以外でもユーザーを獲得。

一方B社は、A社と比較して繁忙期でも年間でトラフィックの多いキーワードが上位にきています。

A社:有料検索キーワード_2017年間 A社vsB社

つまり、A社はトレンドを先読みし、特定のキーワードを用いた有料検索戦略を事前に用意し、繁忙期に多くのエンゲージメントが高いユーザーを獲得できています。

有料検索まとめ

一度、こちらの有料検索に関する情報をまとめます。

  • 流入数のトレンドが似ている
  • 流入数量ではわずかにB社の方が多い
  • 繁忙期のエンゲージメントはA社が高い
  • 年間通した検索キーワードの種類が両社とも似ている
  • A社は繁忙期に特化したキーワードで流入を獲得している

これらの情報をまとめると、量ではB社が勝っていたも、質ではA社が勝っているといった見方ができます。

有料検索から自社の戦略立案を行うために

自社および競合の差とSWOTを明確に落とし込むことで、どのキーワードで勝負するのか?逆に勝負しないのか?といった次の意思決定へ進めます。

そしてエンゲージメント分析から他社のLPを分析し、自社のエンゲージメントを高めるための要素を取得。

キーワードとエンゲージメント、この2点を徹底的に調査することで、自社のボトルネック、成長要因がどこにあるのかを客観的に洗い出せます。

競合の広告手法を自社の戦略に活かす:ディスプレイ広告

この章では、先ほど同様の国外スニーカー小売企業A社とB社におけるディスプレイ広告を解析していきます

ディスプレイ広告解析でわかること

SimilarWebを使ったディスプレイ広告解析により抽出できる、戦略立案を目的とした抽出要素は以下です。

  • 競合と流入/エンゲージメントの観点でどれくらい差があるのか?
  • 競合はどのパブリッシャーを使っているのか?
  • 競合はどのアドネットワークを使っているのか?
  • 競合はどのようなクリエイティブを使っているのか?

さきほどの有料検索解析と同様に競合との差とSWOTを出すことも可能ですが、ディスプレイ広告の場合は競合のクリエイティブを解析することで下記がわかります。

  • クリエイティブのリアプライ
  • 競合の広告コピーやメッセージ性

後述しますが、これらを行うことで自社内でのブレスト会議の効率化を図ることが可能です。

エンゲージメント動向

まず先ほどの有料検索同様、ディスプレイ広告から流入したユーザーのエンゲージメントを解析していきます。

集客チャネル分析_ディスプレイ/動画広告:時系列

訪問回数から推定するに、A社よりもB社の方がディスプレイ/動画広告への広告出稿量が多いです。

特にB社は、先ほどの有料検索では年末にかけて広告出稿量を増やしていたのに対し、ディスプレイ広告では4~6月にかけて出稿量を増やしています。

では、各社はどのパブリッシャーに広告出稿しているのでしょうか?

競合はどのパブリッシャーを使っているのか?

SimilarWebで両社の広告出稿先を解析していくと、両社を足した合計の広告出稿先は全1,120ドメイン。

その中でもトラフィックボリュームの多いtop10を抽出しました。

集客チャネル分析_ディスプレイ/動画広告:パブリッシャー

A社と広告出稿先が被っているパブリッシャーがいくつか見受けられます。例えばYouTubeでは両社共にトラフィックシェアが高いです。

上記データを見るに、ほとんどの広告出稿先でB社が流入を占めています。

ここからBIツールtableauを使い、時系列で両社の出稿状況詳細を見ていきます。

A社のパブリッシャー

A社のパブリッシャー状況_時系列

A社は複数のパブリッシャーを使いつつも、主に2つのパブリッシャーへ出稿しています。

年末にかけてはYouTubeへの出稿が増加しています。

A社のパブリッシャー状況_出稿ボリューム

年間通したトラフィックボリュームにおいてもYouTubeからの流入が多いです。

他のパブリッシャーも使用していますが、メインのパブリッシャーとなるのはYouTube含めた3~6媒体となっています。

B社のパブリッシャー

B社のパブリッシャー状況_時系列

一方のB社。A社同様YouTubeにも出稿していますが、Yahooとslickdealsにも多く出稿しています。

B社のパブリッシャー状況_出稿ボリューム

B社はA社よりも複数のパブリッシャーを利用しています。メインとなるのはYouTube、Yahoo、slickdealsの3社となります。

競合はどのアドネットワークを使っているのか?

調査対象がどこへ広告出稿しているのかわかりました。

ここからは、どのアドネットワークを使って広告出稿しているのかにフォーカスしていきます。

※アドネットワーク先の企業公開はアクセストレンド減少に伴う企業へのネガティブイメージ、ひいては名誉毀損にあたるため本稿では非公開となります。そのためアルファベット企業で記載していますが、こちらは各企業名との関連性はございません。

集客チャネル分析_ディスプレイ/動画広告:アドネットワーク

各社別々に使用しているアドネットワークもありますが、D社やH社は両社ともに使用しています。

A社のアドネットワーク

A社のアドネットワーク状況_時系列

A社が主に利用しているアドネットワークはD社とE社。

3~6月は両社とも使っていましたが、年末では主にE社を利用しています。

B社のアドネットワーク

B社のアドネットワーク状況_時系列

B社はC社をメインに据え、他のアドネットワークを時期ごとに変えてきています。

年末にYouTubeの広告出稿を増し、6月から新たにG社とF社を導入していることから、広告戦略を変えている可能性があります。

SimilarWebでももちろんアドネットワークの状況を追えますが、各サイトにどのような広告タグを入れているのか追えるSimilarTechを用いると、さらに詳しく競合のアドネットワーク状況を追うことが可能です。

SimilarTech

競合はどのようなクリエイティブを使っているのか?

どこに広告を出稿し、どのアドネットワークを使用しているのか分析してきました。

最後に、競合がどのようなクリエイティブを使用し、そこからどのページに遷移しているのかを分析していきます。

集客チャネル分析_ディスプレイ/動画広告:クリエイティブ

こちらはA社が最近出稿していたクリエイティブです。モバイルデバイス上に6タイプのクリエイティブを出稿しています。

SimilarWebのディスプレイ広告分析を使って下記のデータを取得できます。

  • クリエイティブデザイン
  • そのクリエイティブからの遷移先LPリンク
  • いつからいつまで掲載されたか
  • インプレッション
  • 画像サイズ

これらのデータを使い、競合のディスプレイ広告をリアプライしていきます。

競合のディスプレイ広告をリアプライ

ディスプレイ広告比較

クリエイティブのアイデアを考える時間の削減

上記の説明では判断軸を掲載期間とインプレッションに設定しました。あくまで仮説ですが、CPCが良かったためそのクリエイティブを残し、継続配信した可能性があるためです。

ただし、ここで気をつけて頂きたいのは、そのディスプレイ広告の目的によってはこれらの判断軸が正しくないケースがあります。

例えば、リタゲによる最後の刈り取り用に作成したディスプレイ広告は対象ユーザーを絞っているため、インプレッションが多くない可能性もあります。

そのため、今回の分析手法は一例です。

分析する際は、競合のディスプレイの目的は何か、クリエイティブごとに何が違うのか、どのLPへ飛ばしているかなど、多様な情報から読み取り、自社の戦略立案に活かしましょう。

ディスプレイ広告まとめ

SimilarWebを使ってディスプレイ広告分析を行った結果を一度整理します。

  • B社はA社と比較してディスプレイ広告に注力している
  • B社が4~6月にディスプレイ広告出稿量を増やしている
  • A社はYouTubeへの出稿がメイン
  • B社は3つの媒体をメインに出稿している
  • A社のメインアドネットワークは2つ
  • B社はアドネットワークを複数併用している
  • 仮説上、両社とも効果の高いディスプレイ広告を残し、広告運用を行っている

したがって、B社はA社と比較してディスプレイ広告を緻密に戦略だてて出稿している可能性が高いです。

複数のアドネットワークを使用していることもあり、テストマーケティングを行っている可能性も見受けられます。

これまでの分析フローをまとめると以下になります。

ディスプレイ広告から自社の戦略立案を行うために

競合の広告媒体、アドネットワーク、クリエイティブを調査することで、競合の広告手法は全てわかります。

その上で、自社がクリエイティブ作成および広告運用を行う上で、競合に合わせるのか、差別化を図るのかといった、次への戦略を考えるための要素が出揃います。

まとめ

競合の強み/特徴/類似点をまとめる

ここまでA社とB社の有料検索、ディスプレイ広告を解析してきました。

これら全ての示唆をまとめます。

両社の広告手法に関する強み/特徴/類似点

このようにまとめることで、競合とどこが違うのか?自社の強みは何か?といったことを整理できます。

データを戦略に活用する

B社を運営していると仮定し、A社に勝ための戦略立案へ移行する場合は、さらに以下のデータを追いかけます。

両社の広告手法に関する強み/特徴/類似点

上記の分析はSimilarWebだけでなく、他ツールや実際に見て分析するといったアナログ形式での分析が必要です。

ここから先はデータを元に仮説立て、事業をどのように拡大していきたいか目的を明確にした上で、データ解析から他社同様の戦略を立てるのか、差別化を図るのか、目的達成に最短且かつ一番勝つ可能性の高い戦略を選ぶ必要があります。

重要なのは、戦略立案の手前までに有効なデータを明確に整理して揃えておくことです。

今回はWeb広告周りのみの分析です。

ここにインサイト、コンテンツ分析等の要因も合わせて戦略を立てる必要があります。またIR情報等のオフラインデータも揃えておくこともマストです。

まず、データを揃える。

勝つためには非常に重要なステップです。

おわりに

今回はSimilarWebを使い、国外スニーカー小売企業2社の広告手法解析を行いました。

今後執筆していきますが、この他に市場のインサイト、競合のオーガニック検索キーワードおよびこれに伴うインサイト分析、コンテンツ分析、CV動向分析、これら全てを解析していきます。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず

Web領域の戦いを勝ち切るべく、彼(競合)を徹底解析してみてはいかがでしょうか。

similarweb market intelligence try

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Yo Harasawa | Gaprise.Inc Technology Solution Div

Yo Harasawa | Gaprise.Inc Technology Solution Div

SNS広告を用いたディレクション、Marketing Automationツール"Eloqua"を使ったインサイドセールス、SimilarWeb PROによるWeb解析に従事。 みなさまのデジタルマーケティング課題解決に寄与できるコンテンツを配信していきます。 記事内容に関しますご質問は、お気軽に弊社までご連絡ください。

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